片かげの桜芽ぐむや蕗の薹
汁冷えて椀に沈める白魚かな
吹きひずめ終にあがりし石鹸玉
まんまくの朱の横筋やつゝじ園
椿より蝙蝠出でて暮春かな
炉塞の埃も立てず日晴れたり
二月や藁ほどけたる大蘇鉄
二月や峰争うて雲の下
二月や鹿よごれたつ水のはた
欠伸とぢて唇一線や春日猫
下萌や籠鳥吊れば籠の影
馬蹄かへす土に霜あり草萌ゆる
春雷や草に沈める松落葉
雉子追うてまた耕つ淋し春の雨
春雨や幹くらきまで木蓮花
落椿の尻少しあせし紅さかな
落椿を飛ぶ時長き蛙かな
日を恋うて已に星ある 霞かな
陽炎や石乾きつつ草の中
山住は日ぐれかなしき蕨かな
土と掃かれて木賊あはれや春日影
こぼれ合うて畑に盛りや梨の花
木蓮の軒くらきまで咲きにけり
春暁や心をつつみて松細葉
春宵の灰をならして寝たりけり