和歌と俳句

原 石鼎

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片かげの桜芽ぐむや蕗の薹

汁冷えて椀に沈める白魚かな

吹きひずめ終にあがりし石鹸玉

まんまくの朱の横筋やつゝじ園

椿より蝙蝠出でて暮春かな

炉塞の埃も立てず日晴れたり

二月や藁ほどけたる大蘇鉄

二月や峰争うて雲の下

二月や鹿よごれたつ水のはた

欠伸とぢて唇一線や春日猫

下萌や籠鳥吊れば籠の影

馬蹄かへす土に霜あり草萌ゆる

春雷や草に沈める松落葉

雉子追うてまた耕つ淋し春の雨

春雨や幹くらきまで木蓮花

落椿の尻少しあせし紅さかな

落椿を飛ぶ時長き蛙かな

日を恋うて已に星ある かな

陽炎や石乾きつつ草の中

山住は日ぐれかなしきかな

土と掃かれて木賊あはれや春日影

こぼれ合うて畑に盛りや梨の花

木蓮の軒くらきまで咲きにけり

春暁や心をつつみて松細葉

春宵の灰をならして寝たりけり