和歌と俳句

春雷

啄木
肺を病む 極道地主の総領の よめとりの日の春の雷かな

千樫
湖のべのこよひのやどりともしきに春神鳴のなりわたるなり

千樫
春の雷いみじく鳴りてすぎしあと暗き湖べにわれひとり立つ

春雷や杵築の人の気のたかき 石鼎

茂吉
鳴り傳ふ 春いかづちの 音さへや 心燃えたたむ おとにあらずも

春雷や草に沈める松落葉 石鼎

廃宮に鼎大いなり春の雷 橙黄子

春雷や重なり合ふて渡舟牛 橙黄子

春雷や大玻璃障子うち曇り 虚子

春雷やどこかの遠に啼く雲雀 石鼎

春雷や小米の花のうすら影 花蓑

茂吉
くろ雲は この都市を おほはむとして 春のいかづち とどろきにけり

春雷やうす日来てゐる蓬原 石鼎

春雷や大繍毬花いまだ薄緑 石鼎

春雷や牡丹の蕾まつ蒼に 茅舎

春雷やぽたりぽたりと落椿 たかし

春雷や花散りかかる太柱 月二郎

春雷や観瀾亭に客となり 花蓑

再びの春雷をきく舟かな 風生