家持
春の野にあさる雉の妻恋ひにおのがあたりを人に知れつつ
家持
杉の野にさ踊る雉いちしろく音にしも泣かむ隠り妻かも
家持
あしひきの八つ峰の雉鳴き響む朝明の霞見れば悲しも
後拾遺集 入道前太政大臣藤原道長
君ませとやりつる使きにけらし野辺の雉子はとりやしつらむ
後拾遺集 藤原長能
狩にこば行きてもみまし片岡のあしたの原にきぎす鳴くなり
俊成
冬枯れのすそ野の原をやきしより早蕨あさり雉子鳴くなり
西行
生ひかはる春の若草まちわびて原の枯野にきぎす鳴くなり
西行
春の霞いゑ立ち出でて行きにけむきぎす棲む野を燒きてけるかな
西行
片岡にしば移りして鳴くきぎす立つ羽音とて高からぬかは
寂蓮
いかばかり 子を思ふきぎす 迷ふらむ はぐくむ野辺に 煙たつめり
有家
煙立つ片山きゞす心せよ裾野の原に妻もこもれり
家隆
焼捨てし枯野の跡やかすむらん煙にかへるきゞす鳴也
定家
立つ雉のなるる野原もかすみつつ子をおもふみちや春まどふらむ
定家
狩人の霞にたどるはるの日をつまどふきじのこゑに立つらむ
実朝
高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも
実朝
をのがつまこひわびにけり春の野にあさるきぎすのあさなあさななく