うちなびき春くる風のいろなれや日をへて染むる青柳のいと
かざしをる道行き人の袂までさくらににほふきさらぎのそら
行く春の形見とや咲くふぢの花そをだにのちの色のゆかりに
白妙の衣ほすてふ夏のきて垣根もたわにさける卯の花
ほととぎすなくやさ月のやどがほにかならずにほふ軒のたちばな
おほかたの日かげにいとふみな月の空さへをしきとこ夏の花
秋ならで誰もあひ見ぬをみなへしちぎりやおきし星合のそら
秋たけぬいかなる色と吹く風にやがてうつろふもとあらの萩
花すすき草の袂のつゆけさをすてて暮れ行くあきのつれなさ
神無月霜夜の菊のにほはずばあきのかたみになにをおかまし
冬の枇杷木草のこさぬ霜の色を葉がへぬえだの花ぞさかふる
色うづむ垣根の雪の花ながら年のこなたににほふうめがえ
春来てはいくかもあらぬ朝戸いでに鶯きゐる里のむらたけ
狩人の霞にたどるはるの日をつまどふきじのこゑに立つらむ
すみれ咲く雲雀の床に宿かりて野をなつかしみくらす春かな
まきのとをたたく水鶏のあけぼのに人やあやめの軒の移り香
みじか夜の鵜川にのぼるかがり火のはやくすぎゆく水無月の空
長き夜に羽をならぶるちぎりとて秋まちわたるかささぎの橋
ながめつつ秋の半もすぎの戸にまつほどしるき初かりのこゑ
ひと目さへいとどふかくさ枯れぬとや冬まつ霜に鶉鳴くらむ
夕日かげむれたるたづはさしながら時雨の雲ぞ山めぐりする
ながめする池の氷にふる雪のかさなる年ををしの毛ごもろ