和歌と俳句

雉 きぎす

子に鳴いて見せるか雉の高調子 子規

雉鳴くや庭の中なる東山 子規

雉鳴くや背丈にそろふ小松原 子規

山道や人去て雉あらはるる 子規

雉子なく滋賀の山人老ぬらし 虚子

雉鳴くや那須の裾山家もなし 子規

雉鳴くや雲裂けて山あらはるる 子規

雉子の声大竹原を鳴り渡る 漱石

子規
ところどころつつじ花咲く小松原岡の日向にきぎす居る見ゆ

草籠の蔭に雉子や春の山 蛇笏

難所なる蠑螺上りや雉の声 碧梧桐

城山の竹むらに鳴く雉子かな 蛇笏

左千夫
つつじ咲く岡の松原松芽立ちおくの沢辺にきぎすたかなく

久遠寺へ閑な渡しや雉子の声 蛇笏

白秋
月の夜の ましろき躑躅 くぐりくぐり 雉子ひそみたり しだり尾を曳き

赤彦
旧道ののぼりくだりを行きしかば雉子鳴くもよ草山の上に

茂吉
やまたづむむかひの森にさぬつどり雉子啼きとよむ聲のかなしさ

千樫
あからひく朝靄はるる土手の上に雉子光りて見えにけるかも

千樫
おのがじし己妻つれて朝雉のきほひとよもす聲のかなしさ

千樫
さ青なる蕗の丸葉に尾を触りて雉子しまらくうごかざりけり

憲吉
春雨のこの降る雨の木がくりに雉子啼くなり遊べるらしも

耕平
耳につくうつつの聲は朝雉子とてもかくても立ち別れなむ

駕二挺重なり下る雉子の谷 虚子