和歌と俳句

暖か ぬくし

あたたかな雨が降るなり枯葎 子規

あたたかに白壁ならぶ入江かな 子規

あたたかや蜆ふえたる裏の川 虚子

赤飯の湯気あたたかに野の小店 子規

暖かや蕊に蝋塗る造り花 龍之介

暖き乗合船の京言葉 虚子

人寄せの大地に描く暖き 虚子

維好日日あたたかに風さむし 虚子

暖かや首のべて駱駝うづくまる 亞浪

萱の根の甘さ噛み居る暖かき 亞浪

暖き乗合舟や菅の笠 碧梧桐

夜明けから雀が鳴いて暖かき 亞浪

石蹴りの筋引いてやる暖かき 亞浪

暖かや筆ころがして詩眠る 喜舟

掌にとつて草葉のうごく暖かき 亞浪

耕平
にはたづみ溢るる見ればこの朝の雨暖かくなりにけるかも

耕平
海原を吹き来る風は暖かしたちまちにして木の芽ひらくも

暖かや飴の中から桃太郎 茅舎

恩を謝し怨を忘れあたたかし 風生

暖かく掃きし墓前を去りがたし 蛇笏