和歌と俳句

野村喜舟

春暁や御陵連ねて大和なる

春風や鳩の塒へ千社札

春泥や魚屋の荷の鯛鰆

猟人に彩羽見せとぶ雉子かな

荒海の岬の空の雲雀かな

葱坊主畝一筋に残りけり

芳しき墨すり流す日永かな

摘草や船橋ゆるゝ風の中

耕やかの脛長の夕日影

の鳴く中叩く魚板かな

鮒売や春めく笊を打重ね

汐満ちて止る流れや暮の春

春の海岬の数を並べけり

護国寺の涅槃年々拝みけり

太柱二本かくれぬ涅槃像

凧上げや小石川台の一角に

耕の海道すこし削りけり

白魚を筏に刺しゝ楊枝かな

漁村から岬へのぼる梅見かな

塀の内の木蓮高し散るを見る

暖かや筆ころがして詩眠る

雹降るや冽々として花の色

葛城の神雹降らすかな

躑躅野や躑躅抜きたる穴一つ