野村喜舟
朧夜の蔀の格子ありにけり
鼈甲屋の叩く調子は日永かな
春風や枝こまやかに椋榎
春風や米屋が前の鳩十羽
春風や紙漉く水に玉襷
旅笠の裏の師の句や春の風
鳴交す鴉の嘴の霞かな
陽炎に躍る鰌や鶴の閑
陽炎や加茂の堤の古へは
陽炎の燃えて野蒜の匂ひかな
子について上る二階の雛かな
白梅や水の清きに鮠も居ず
梅が香や関りもなく麦は踏み
梅が香や岬の神へ灯を上げて
白梅や小桶乾ける夕まぐれ
ふところにサンドウィッチの梅見かな
八幡の鳩に咲いたる桜かな
取出でゝむすびの白き桜かな
酔人の理屈をかしき桜かな
花に来て瓦堀りけり国分寺