和歌と俳句

霞 かすみ

大比叡やしの字を引て一霞 芭蕉

春なれや名もなき山の朝がすみ 芭蕉

武蔵野の幅にはせばき霞哉 嵐雪

あふみにもたつや湖水の春霞 鬼貫

朝霞み峠を越ゆる馬の息 浪化

むさし野は霞のうちの霞かな 千代女

七景は霞にかくれ三井の寺 千代女

青柳の朝寝をまくる霞かな 千代女

蝶々の羽風も尽す霞かな 千代女

鳥は音にあとやさきやと霞かな 千代女

高麗舟のよらで過ぎゆく霞かな 蕪村

指南車を胡地に引去る霞哉 蕪村

望汐の遠くも響くかすみ哉 召波

ふりむけば灯とぼす関や夕霞 太祇

今日は身を船子にまかすかすみかな 太祇

比良の雪大津の柳かすみけり 几董

三条をゆがみもて行霞かな 几董

行さきや眼のあたりなる野の霞 青蘿

三文が 霞見にけり遠眼鏡 一茶

門前や何万石の遠がすみ 一茶

むく起の鼻の先よりかすみ哉 一茶

今さらに別ともなし春がすみ 一茶

よい程の道のしめりや朝霞 一茶

京見えて脛をもむ也春がすみ 一茶

春がすみ鍬とらぬ身のもつたいな 一茶

夕風呂のだぶりだぶりとかすみ哉 一茶

彼桃が流れ来よ来よ春がすみ 一茶

かすむ日の咄するやらのべの馬 一茶

すりこ木の音に始るかすみ哉 一茶

西山やおのれがのるはどのかすみ 一茶

我里はどうかすんでもいびつ也 一茶

茶を呑めと鳴子引也朝がすみ 一茶

笠でするさらばさらばや薄がすみ 一茶

古郷や朝茶なる子も春がすみ 一茶

かすむ日やしんかんとして大座敷 一茶

横乗の馬のつづくや夕がすみ 一茶