和歌と俳句

加賀千代女

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松ばかりもとめぬ色や春のあめ

庭に出て空は見やらず春のあめ

萠しさる草なになにぞ春の雨

朝夕に雫のふとるこのめ

物をいふまでは名のなき木の芽哉

むさし野は霞のうちのかな

七景は霞にかくれ三井の寺

青柳の朝寝をまくる霞かな

蝶折ゝ扇いで出たる霞かな

蝶々の羽風も尽す霞かな

鳥は音にあとやさきやと霞かな

鳥は音に跡先さそふ霞かな

いとゆふや短きものに長いもの

陽炎やほしてはぬるる水の上

陽炎ややれぬは水のうたがはし

かさとりの山や笑ひのもどかしき

何やらの時見置たる根芹かな

築山は人の手つたふわらびかな

つくつくしこじょらに寺の跡もあり

ひとつとはいはぬ筈なり土筆

よしあしを地に並べけりつくつくし

陰はみな墨に染たるつくしかな

永き日を又つぎのばす土筆

うつむいた所が台やすみれ草