松ばかりもとめぬ色や春のあめ
庭に出て空は見やらず春のあめ
萠しさる草なになにぞ春の雨
朝夕に雫のふとるこのめ哉
物をいふまでは名のなき木の芽哉
七景は霞にかくれ三井の寺
青柳の朝寝をまくる霞かな
蝶折ゝ扇いで出たる霞かな
蝶々の羽風も尽す霞かな
鳥は音にあとやさきやと霞かな
鳥は音に跡先さそふ霞かな
いとゆふや短きものに長いもの
陽炎やほしてはぬるる水の上
陽炎ややれぬは水のうたがはし
かさとりの山や笑ひのもどかしき
何やらの時見置たる根芹かな
築山は人の手つたふわらびかな
つくつくしこじょらに寺の跡もあり
ひとつとはいはぬ筈なり土筆
よしあしを地に並べけりつくつくし
陰はみな墨に染たるつくしかな
永き日を又つぎのばす土筆哉
うつむいた所が台やすみれ草