和歌と俳句

加賀千代女

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若くさや駒の寝起もうつくしき

若くさや尾の顕はるる雉子の声

若草やまがれるものはしれやすし

いふことも羽でととのふこてふ

てふてふや幾野の道の遠からず

わが風で我吹おとす胡蝶かな

雨の日はあすの夢までこてふ

招き合ふていふにもまさる胡蝶かな

吹よせて 十にもたらぬ 胡蝶かな

春風もゆだんはならず鹿の角

春風やいろいろの香をそそのかし

梅散てさぞ春風も松の月

山吹のほとけかかるや水の幅

山吹や影も狂はぬ水の影

山吹や花ありたけを水に置

山吹や柳に水のよどむころ

かほる風おくにひかへて松の花

吹つもる塵出なをして松の花

其音は水にもたして松の花

誰もかも見てわするるや松の華

わか松やみな下に成ものの音

おしめども春は留らで啼

このころの田にもこぼるるかはづかな

ふたつみつ飛んで見て飛かな

一つ飛ぶそこで皆とぶかな