和歌と俳句

加賀千代女

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隠すべき事もあれ也雉の声

朝夕やかほに火をたくきしの声

夜になれば笑ふ気になる雉子かな

萠る隙にきじもこもるや草のはら

雉子鳴て山は朝寝のわかれかな

雉子啼やおもはぬ事も思ふ比

うくひすにまたるる梅はなかりけり

うくひすの初音や竹に何の味

うくひすは言そこなひが初音哉

うくひすやさむさわすれぬ竹の有

うくひすやはてなき空をおもひ切

うくひすや都きらひの竹の奥

うくひすや冬其儘の竹もあり

鴬のどちらが鳴ぞ水の影

鴬の隣まで来てゆふべ哉

鴬はひと戻りして初音かな

鴬やけふ此庭に幾久し

鴬や水音のんで言はじめ

鴬や椿落して迯て行

鴬や梅にも問ずよそ歩行

鴬や梅にも問ず遠ふ歩行

下もえをうらからのぞく土橋かな

下萌に雫あふなき柳哉

あがりては下を見て鳴ひばりかな

おそろしや高い所に啼雲雀