和歌と俳句

加賀千代女

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ふか入のした日の脚や山ざくら

眼をふさぐ道もわすれて山さくら

近よれば水は離れて山さくら

山桜花のうらこそ夕日影

女子どし押てのぼるや山さくら

潜るとて刺はせねども山桜

おのづから手も地につくや糸さくら

ぴんとしたはちりた枝也糸さくら

むすばれて蝶も昼寝や糸さくら

影は滝空は花なりいとさくら

かりそめの道を問ひ置汐干

海士の子に習らはせて置汐干

拾ふものみな動く也塩干潟

青柳のけふは短きしほ干かな

蝶蝶のつまたてて居るしほ干かな

おされ合ふてものの根を根に春の草

静かさは何の心ぞ春の草

分入ば水音ばかり春のくさ

わかくさやきれまきれまに水のいろ

わか草や根よけに立し宵の雨

若くさやまだどちらへもかたよらず