西行
ませにさく花にむつれて飛ぶ蝶の羨しきもはかなかりけり
世の中よてふてふとまれかくもあれ 宗因
おきよおきよわが友にせむぬるこてふ 芭蕉
蝶よてふよ唐土のはいかい問む 芭蕉
蝶の飛ばかり野中の日かげ哉 芭蕉
物好や匂はぬ草にとまる蝶 芭蕉
蝶の羽の幾度越る塀のやね 芭蕉
いふことも羽でととのふこてふ哉 千代女
てふてふや幾野の道の遠からず 千代女
わが風で我吹おとす胡蝶かな 千代女
雨の日はあすの夢までこてふ哉 千代女
招き合ふていふにもまさる胡蝶かな 千代女
蝶々や花盗人をつけてゆく 也有
釣鐘にとまりてねむるこてふ哉 蕪村
うつゝなきつまみごゝろの胡蝶哉 蕪村
屋根ふきのあがれば下るこてふ哉 召波
蝶とぶやあらひあげたる流しもと 白雄
見初ると日々に蝶みる旅路かな 太祇
風の蝶きえては麦にあらはるゝ 青蘿
窓明て蝶を見送る野原哉 一茶
蝶一つ舞台せましと狂ふ哉 一茶
辻風の砂にまぶれし小蝶哉 一茶
八つ過の家陰行人春の蝶 一茶
懐へ入らんとしたる小てふ哉 一茶
春のてふ山田へ水の行とどく 一茶
通り抜けゆるす寺也春のてふ 一茶
うそうそと雨降中を春のてふ 一茶
川縁や蝶を寝さする鍋の尻 一茶
葭簀あむ槌にもなれし小てふ哉 一茶
蝶とぶや夕飯過の寺参り 一茶
蝶とぶや二軒もやひの痩畠 一茶
帋漉にうるさがらるる小てふ哉 一茶
箍かけよ臼の目切よ門のてふ 一茶
蝶とぶや此世に望みないやうに 一茶
むつましや生れかはらばのべの蝶 一茶
蝶とぶやしなののおくの艸履道 一茶
蝶が来てつれて行けり庭のてふ 一茶
手枕や蝶は毎日来てくれる 一茶
うら住や五尺の空も春のてふ 一茶
寝るてふにかしておくぞよ膝がしら 一茶
べつたりと蝶の咲たる枯木哉 一茶
麦に菜にてんてん舞の小てふ哉 一茶
石なごの一二三を蝶の舞にけり 一茶
湯入衆の頭かぞへる小てふ哉 一茶
蝶見よや親子三人寝てくらす 一茶
門の蝶子が這へばとびはへばとぶ 一茶