蛙居て啼やうき藻の上と下
出代や厩は馬にいとまごひ
やぶ入の寐るやひとりの親の側
長閑さに無沙汰の神社回りけり
落かゝる夕べの鐘やいかのぼり
屋ね低き声の籠りや茶摘哥
桃ありてますます白し雛の殿
御僧のその手嗅たや御身拭
口馴し百や孫子の手毬うた
飛ビむめにもどらぬ鴈を拝みけり
陽炎や景清入れし洞の口
墨染のうしろすがたや壬生念仏
炉ふさぎや老の機嫌の俄事
節に成る古き訛や傀儡師
山吹や葉に花に葉に花に葉に
腹立て水呑蜂や手水鉢
人追ふて蜂もどりけり花の上
声立て居代る蜂や花の蝶
見初ると日々に蝶みる旅路かな
苗代や日あらで又も通る路
御供してあるかせ申汐干哉
女見る春も名残やわたし守
春ふかし伊勢を戻りし一在所
夜歩く春の余波や芝居者
行春や旅へ出て居る友の数