里の子や髪に結なす春の草
元船の水汲うらや蕗の薹
花店に二寸短し富貴の薹
朱を研や蓬莱の野老人間に落
こゝろゆく極彩色や涅槃像
ねはむ会に来てもめでたし嵯峨の釈迦
引寄て折手をぬける 柳かな
善根に灸居てやる彼岸かな
起 々に蒟蒻もらふ彼岸かな
川下に網うつ音やおぼろ月
海の鳴南やおぼろおぼろ月
月更て朧の底の野風哉
島原へ愛宕もどりやおぼろ月
連翹や黄母衣の衆の屋敷町
実の為に枝たはめじな梨の花
畑うつやいづくはあれど京の土
耕すやむかし右京の土の艶
山葵ありて俗ならしめず辛キ物
はる雨や芝居みる日も旅姿
草をはむ胸安からじ猫の恋
おもひ寐の耳に動くや猫の恋
春の日や午時も門掃く人心
扨永き日の行方や老の坂
遅き日を見るや眼鏡を懸ながら
長閑さや早き月日を忘れたる