春雨や喰れ残りの鴨が鳴
菴の猫玉の盃そこなきぞ
なの花も猫の通ひぢ吹とぢよ
すりこ木の音に始るかすみ哉
手枕や蝶は毎日来てくれる
山寺や翌そる児の几巾
西山やおのれがのるはどのかすみ
月よ梅よ酢のこんにやくのとけふも過ぬ
かしましや江戸見た厂の帰り様
うら住や五尺の空も春のてふ
穴蔵の中で物いふ春の雨
武士や鶯に迄つかはるる
陽炎や鍬で追やる村烏
昼飯をたべに下りたる雲雀哉
鶯やとのより先へ朝御飯
柳からももんぐわとて出る子哉
春風に尻を吹るる屋根屋哉
春の風おまんが布のなりに吹
寝るてふにかしておくぞよ膝がしら
笠きるや櫻さく日を吉日と
大雨や花の三月ふりつぶす
汁の実も蒔ておかれし畠ぞよ
一つ舟に馬も乗りけり春の雨