和歌と俳句

小林一茶

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雑巾をはやかけらるるつぎ木

春雨に大欠伸する美人哉

五百崎や御舟をがんで帰る鴈

わら苞やとうふのけぶる春の雨

春風や牛に引かれて善光寺

祠から皃出して鳴きぎす

家根をはく人の立けり夕櫻

さくや木辻の君が夕粧ひ

ゆさゆさと春が行ぞよのべの艸

山吹をさし出し皃の垣ね哉

彼桃が流れ来よ来よ春がすみ

おのれやれ今や五十の花の春

かかる世に何をほたへてなく

里の子や艸つんで出る狐穴

春立や菰もかぶらず五十年

小盥や今むく田螺辷あそぶ

かすむ日の咄するやらのべの馬

うつくしや雲雀の鳴し迹の空

細長い春風吹や女坂

春の風いつか出てある昼の月

永の日を喰やくはずや池の亀

鳴や関八州を一呑に

亀の甲並べて東風に吹れけり

陽炎にめしを埋る烏哉

夕不二に尻を並べてなく