雑巾をはやかけらるるつぎ木哉
春雨に大欠伸する美人哉
五百崎や御舟をがんで帰る鴈
わら苞やとうふのけぶる春の雨
祠から皃出して鳴きぎす哉
家根をはく人の立けり夕櫻
藤さくや木辻の君が夕粧ひ
ゆさゆさと春が行ぞよのべの艸
山吹をさし出し皃の垣ね哉
彼桃が流れ来よ来よ春がすみ
おのれやれ今や五十の花の春
かかる世に何をほたへてなく蛙
里の子や艸つんで出る狐穴
春立や菰もかぶらず五十年
小盥や今むく田螺辷あそぶ
かすむ日の咄するやらのべの馬
うつくしや雲雀の鳴し迹の空
細長い春風吹や女坂
春の風いつか出てある昼の月
永の日を喰やくはずや池の亀
雉鳴や関八州を一呑に
亀の甲並べて東風に吹れけり
陽炎にめしを埋る烏哉
夕不二に尻を並べてなく蛙