和歌と俳句

小林一茶

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鳥と共に人間くぐる

正月の子供に成て見たき哉

親ありとこたへてもどる櫻哉

我もけさ清僧の部也梅の花

とそ酌もわらじながらの夜明哉

むく起の鼻の先よりかすみ

なの花に四つのなる迄朝茶哉

花の雲あれが大和の小口哉

春鳥や軒去らぬ事小一日

今さらに別ともなし春がすみ

よい程の道のしめりや朝霞

元日にかわいや遍路門に立

行春や我を見たをす古着買

門松やひとりし聞は夜の雨

ゆふ暮の松見に来ればかへる鴈

今少したしなくもがな菫草

なつかしやあちこちに夕木魚

茹汁の川にけぶるや春の月

つやつやと露のおりたるやけ野

辻風の砂にまぶれし小蝶

八つ過の家陰行人春の蝶

文七が下駄の白さよ春の月

春の風艸深くても古郷也

夕櫻家ある人はとくかへる

さけどなけどひとり哉