人よりも朝きげん也かへる鴈
きのふ寝しさが山見へて春の雨
蒲公英に飛くらしたる小川哉
木曾山はうしろになりぬ鳴雲雀
油火のうつくしき夜やなく蛙
こつこつとひと行過て花のちる
葭簀あむ槌にもなれし小てふ哉
春の日や水さへあれば暮残り
野大根も花咲にけり鳴雲雀
奈良漬を丸でかぢりて花の陰
霞み行や二親持し小すげ笠
地車におつぴしがれし 菫哉
福蟾ものさばり出たり桃花
親里へ水は流るる春辺哉
一日も我家ほしさよ梅花
梅咲や去年は越後のあぶれ人
来るも来るも下手 鶯よ窓の梅
春立つや四十三年人の飯
梅がかやおろしやを這はす御代にあふ
髪虱ひねる戸口も春野哉
梅がかやどなたが来ても欠茶碗
わが春やタドン一ツに小菜一把
牛の子の皃をつん出す 椿哉
さし柳翌は出て行庵哉
陽炎や笠の手垢も春のさま