春の日や暮れても見ゆる東山
蝶とぶや夕飯過の寺参り
かすむ日や夕山かげの飴の笛
蝶とぶや二軒もやひの痩畠
片ヒザは月夜也けり夕蛙
山やくや眉にはらはら夜の雨
三日月や田螺をさぐる腕の先
艸蔭にぶつくさぬかす蛙哉
菜の花にかこち顔なる蛙哉
艸の葉や 燕来初てうつくしき
初春も月夜となるや皃の皺
春の月さはらば雫たりぬべし
花ちるやひだるくなりし皃の先
壁土に丸め込まるる 菫哉
艸の葉のひたひた汐やとぶ乙鳥
下京の窓かぞへけり春の暮
砂を摺大淀舟や暮遅き
又ことし娑婆塞ぞよ艸の家
寺山や春の月夜の連歌道
落柿舎の奈良茶日つづく木芽哉
昼比やほろほろ 雉の里歩き
山陰も畠となりてなく雉子
春雨や窓も一人に一つづつ