暑き夜を唄で参るや善光寺 一茶
夕月や御煤の過し善光寺 一茶
浴るともあなたの煤ぞ善光寺 一茶
甘酒や幼なおぼえの善光寺 万太郎
赤彦
古りにし佛の御堂にまゐり来れば杏は熟れぬ道のうへの木に
赤彦
善光寺山門下の家々に木垂る杏は黄に熟れにけり
赤彦
これの世に縁はなしと思ふ子の頻りにかなしみ佛のあかり
赤彦
おのが子の戒名もちて雪ふかき信濃の山の寺に来にけり
赤彦
のぼり行く坂のなかばより山門の雪の屋根見ゆ星空の下に
赤彦
善光寺山内さむし雪掃きて鳩あそびゐる長き鋪石道
赤彦
母を奉じて信濃の國の古寺に遠来ましつる命をぞ思ふ
赤彦
老ゆるもの子に従ひて尊けれ信濃の寺に遠く来ませり
赤彦
御佛のみ庭に花の散るひまも母に随ひて心惜しまむ
夏旅や俄か鐘きく善光寺 蛇笏
迢空
春深き信濃の寺に、思へども━━、かそけかりけり。父母のうへ
迢空
淡雪に、廻廊も 土も ひた濡るる昼を見にけり。信濃のみ寺に
そびゆるは甲斐善光寺葡萄園 蕪城
千年の秋の山裾善光寺 虚子