和歌と俳句

小林一茶

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かけ金の真赤に錆て

夕月や御煤の過し善光寺

是がまあつひの栖か五尺

ほちやほちやとにくるまる在所哉

しなのぢの山が荷になる

納豆の糸引張て遊びけり

はつ雪や俵のうへの小行灯

人のためしぐれておはす仏哉

死にこぢれこぢれつつかな

盛任が横面たたくあられ

菴の夜は餅一枚の明り哉

炉開やあつらへ通り夜の雨

せき候にけられ給ふな迹の児

下町に曲らんとして鐘氷る

蛬其大根も今引くぞ

霜がれや新吉原も小藪並

上置の干菜切れとや夕千鳥

御地蔵と日向ぼこして鳴ち鳥

おち葉してけろりと立ちし土蔵哉

似合しや女坂下る帋衣達

はつ雪やといへば直に三四尺

戸口までづいと枯込野草哉

ちるやきのうは見へぬ借家札

衾から顔出してよぶ菜うり哉

淋しさやおち葉が下の先祖達