和歌と俳句

小林一茶

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昼比にもどりてたたむふとん

丘の馬の待あき顔や大根引

大根引一本づつに雲を見る

親も斯見られし山や冬籠

鷹それし木のつんとして月よ哉

かれ芒人に売れし一つ家

おのが身になれて火のない火燵

くわんくわんと炭のおこりし夜明哉

赤い実もはかり込だる粉炭

もはや俵の底ぞ三ケの月

好と窓むきあふて借家哉

浅ましきや見るらん人の顔

初雪のふはふはかかる小鬢哉

初雪や誰ぞ来よかしの素湯土瓶

ゆで汁のけぶる垣根也みぞれふる

酒菰の戸口明りやみぞれふる

けしからぬ月夜となりしみぞれ

鳥の羽のひさしにさはる

川縁や炬燵の酔をさます人

けろけろと師走月よの榎哉

年已暮んとす也旅の空

ぱちばちと椿咲けり炭けぶり

衛士の火のますますもゆる

ぼんのくぼ夕日にむけて火鉢

木がらしや地びたに暮るる辻諷ひ