野はかれて何ぞ喰ひたき庵哉
木がらしの吹留りけり鳩に人
木がらしやこんにやく桶の星月夜
木がらしや小溝にけぶる竹火箸
炭俵はやぬかるみに蹈れけり
みそさざいちつといふても日の暮る
はつ雪に白湯すすりても我家哉
冬枯ててもちぶさたの山家哉
冬枯にめらめら消るわら火哉
冬枯に看板餅の日割哉
埋火に桂の鴎聞へけり
炭の火や夜は目につく古畳
ちとの間は我宿めかすおこり炭
炭くだく手の淋しさよかぼそさよ
じつとして雪をふらすや牧の駒
はつ雪や葛西烏がうかれ鳴
耕さぬ罪もいくばく年の暮
口明けて春を待らん犬はりこ
夜の雪だまつて通る人もあり
餅の出る槌がほしさよ年の暮
梅干と皺くらべせんはつ時雨
鐘氷る山をうしろに寝たりけり
五十にして冬籠さへならぬ也
もろもろの愚者も月見る十夜哉