好忠
埋火の下に憂き身をなげきつつはかなく消えむ事をしぞ思
匡房
ほにいでて まだおきながら 埋火の 舟ならねども こがれこそすれ
公実
埋火の 下に焦がるる かひなしや 消えも消えずも 人の知らねば
新古今集・冬 権僧正永縁
中々に 消えは消えなで 埋火の 生きてかひなき 世にもあるかな
俊頼
いかにせむ灰のしたなる埋火の埋もれてのみ消えぬべきかな
顕仲
埋火の 消えなむとのみ 思ふかな 生きてくゆれど かひしなければ
師頼
いふことも なき埋火を おこすかな 冬の寝覚めの 友しなければ
京極関白家肥後
うづみびの したのこころを しらずして きえもやすると おきゐてぞみる
祐子内親王家紀伊
ねざめして かきおどろかす うづみびぞ ふゆのよふかき ともにはありける
俊成
埋火を見るよりほかの友ぞなき柴のあみ戸は風のまかせて
定家
見るままにやがてきえ行く埋火のはかなきよをも頼みけるかな
定家
うちのほふふせごの下の埋火に春のこころやまづかよふらむ
定家
つくづくと わがよもふくる 風のおとに 昔こひしき うづみ火のもと
定家
うづみ火の 消えぬひかりを たのめども なほ霜さゆる 床の狭莚
俊成
埋火のあたりに近きうたたねは春の花こそ夢に見えけれ
良経
したにのみしのぶ昔のかひなきやかきあらはさぬ夜半の埋火
新勅撰集 嘉陽門院越前
いたまより そでにしらるる 山おろしに あらはれわたる うづみ火のかげ
埋火もきゆやなみだの烹る音 芭蕉
埋火や壁には客の影ぼうし 芭蕉
埋火はふとんを通す茶の匂ひ 許六
うづみ火や夜ふけて門を叩く音 許六
埋火や障子より来る夜の明り 浪化
うづみ火や我かくれ家も雪の中 蕪村
埋火も我名をかくすよすがかな 蕪村
うづみ火や終には煮る鍋のもの 蕪村
埋火や物そこなはぬ比丘比丘尼 蕪村
埋火や春に減りゆく夜やいくつ 蕪村
埋火をさがす郭巨がきせる哉 蕪村
うづみ火に我夜計るや枕上 召波
おのおのの埋火抱て継句かな 召波
埋火や夜学にあぶる掌 白雄
埋火やうちこぼしたる風邪薬 白雄
埋火に猫背あらはれ玉ひけり 太祇
埋火にとめれば留る我が友 太祇
埋火に桂の鴎聞へけり 一茶
埋火や白湯もちんちん夜の雨 一茶
良寛
埋み火やややしたしくぞなりにけるをちの山べに雪やふるらん