和歌と俳句

小林一茶

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座敷から湯に飛入るや初時雨

灯蓋にのたまる夜店哉

ちらちら一天に雲なかりけり

さむしろや餅を定木にを切

霜の夜や横町曲る迷子鉦

はつ雪に一つ宝の尿瓶かな

死下手とそしらば誹れ夕炬燵

何諷ふ炬燵の縁をたたきつつ

雪菰や投込んで行とどけ状

空色の山は上総か霜日和

飛騨山の入日横たふいろり

雪国や土間の小すみの葱畠

うつくしく油の氷る灯かな

わらんべは目がねにしたるかな

行人を皿でまねくや薬喰

降雪やわき捨てある湯のけぶり

三絃のばちで掃きやる

ばせを翁の像と二人やはつ時雨

頭巾きて見てもかくれぬ白髪哉

ちらりちらり見事な月夜哉

飛のいて烏笑ふや雪礫

手拭のねぢつたままの

煤はきや東は赤い日の出空

埋火や白湯もちんちん夜の雨

明がたや明りの流し元