座敷から湯に飛入るや初時雨
灯蓋に霰のたまる夜店哉
雪ちらちら一天に雲なかりけり
さむしろや餅を定木に餅を切
霜の夜や横町曲る迷子鉦
はつ雪に一つ宝の尿瓶かな
死下手とそしらば誹れ夕炬燵
何諷ふ炬燵の縁をたたきつつ
雪菰や投込んで行とどけ状
空色の山は上総か霜日和
雪国や土間の小すみの葱畠
うつくしく油の氷る灯かな
わらんべは目がねにしたる氷かな
行人を皿でまねくや薬喰
降雪やわき捨てある湯のけぶり
三絃のばちで掃きやる霰哉
ばせを翁の像と二人やはつ時雨
頭巾きて見てもかくれぬ白髪哉
雪ちらりちらり見事な月夜哉
飛のいて烏笑ふや雪礫
手拭のねぢつたままの氷哉
煤はきや東は赤い日の出空
埋火や白湯もちんちん夜の雨
明がたや葱明りの流し元