和歌と俳句

小林一茶

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木がらしや物さしさした小商人

小便の百度参りやさよ千鳥

焼筆で飯を食つつ冬籠

うら壁やしがみ付ひたる貧乏

霜がれてせうじの蠅のかはゆさよ

さくさくと氷かみつる茶漬哉

うらの戸や腹へひびきて凍割る

ちよんぼりと雪の明りや後架道

垣際のぱつぱとはしやぐあられ

うす壁にづんづと寒が入にけり

木がらしや菰に包んである小家

木がらしや木葉にくるむ塩肴

我家や初氷柱さへ煤じみる

闇夜のはつ雪らしやぼんの凹

霜の夜や前居た人の煤下る

煤はきや旭に向ふ鼻の穴

うすうすと寝るや炬燵の伏見舟

雪車負て坂を上るや小さい子

御神楽やおきを弘げる雪の上

ひいき目に見てさへ寒き天窓哉

榾の火にせなか向けり最明寺

子宝がきやらきやら笑ふ榾火哉

さをしかのしの字に寝たる小春

木がらしやから呼びされし按摩坊

朝霜や歯磨売ときらず売