和歌と俳句

神楽

大神楽親に添寝の夢もなし 言水

万代の〆をあけけり神楽帳 其角

夜神楽や鼻息白し面の内 其角

誰と誰が縁組済で里神楽 其角

おもしろもなふて身にしむ神楽哉 北枝

むつかしき拍子も見えず里神楽 曽良

馳折をしばらくおろす神楽哉 几董

夜神楽や水涕拭ふ舞の袖 几董

里神楽懐の子も手をたたく 一茶

夜神楽や焚火の中へちる紅葉 一茶

御神楽やおきを弘げる雪の上 一茶

たふとさに寒し神楽の舞少女 子規

里神楽柿くひながら見る人よ 虚子

磧ゆくわれに霜夜の神楽かな 蛇笏

落月をふむ尉いでし神楽かな 蛇笏

土器にともし火燃ゆる神楽かな 蛇笏

姫の貌まぼろしを追ふ神楽かな 蛇笏

山神楽冬霞みしてきこえけり 蛇笏

里神楽秋の田の額昔より 青畝

里神楽こと分らねど面白き 立子

一蓮寺水べの神楽小夜更けぬ 蛇笏

櫃一つ神楽の庭に待ちつつあり 青畝

神楽笛ひょろひょろいへば人急ぐ 青畝

燈をささぐ暁まだくらし神楽姫 蛇笏

鍵束を凍湖に鳴らし神楽舞 鷹女

神楽ひよつとこ神楽おかめの惚れ手振り 多佳子

神楽の世をんなおかめの妬き手振り 多佳子

泣きじやくる神楽おかめの笑ひ面 多佳子

一天の青き神代を里神楽 静塔

神楽面目穴通じて道化ぶり 静塔

綿虫に神楽の鬼の命乞 静塔

里神楽見る切株に腰あふれ 静塔

神楽囃子腰に梓の弓を張り 静塔

山垣の襟を重ねて神楽笛 静塔

おほらかに神代はみだら里神楽 静塔

陰ありて神楽の女神足蹴あげ 静塔

齢なき神の集ひて里神楽 静塔

渋柿を天にとどける神楽笛 静塔

里神楽出を待つ畑の菜を賞めて 静塔

傾きて日脚一服里神楽 静塔

神楽面脱ぐ水洟の涜なし 静塔

里神楽見そなはされし天に礼 静塔