平畑静塔
白樺を壁炉の腹はくひつくす
枯骨の左右枯黍つり合へり
綾の目に積める年木は尼公用
岳人の行方の深き除夜の鐘
星のため月は削られ除夜の鐘
みえぬものひかるしぐれのうへのあめ
たけのふしながくひとつぶづつしぐれ
一天の青き神代を里神楽
神楽面目穴通じて道化ぶり
綿虫に神楽の鬼の命乞
里神楽見る切株に腰あふれ
神楽囃子腰に梓の弓を張り
白息やふたたび死なず波郷死す
父の座に残る枯葉のほほゑまし
北窓を塞ぎ安心札をはり
荒涼と枯れたる中の鴨の枯
禁猟句空ゆく鴨の濡羽閉ぢ
冬の夜のこと地平線夢に引く
豪雪のレール継目も除雪され
泊り木に立山の鷹落目なり
芦枯れて野佛の顔枯以上