和歌と俳句

平畑静塔

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スケートや青くかなしき空の魚

木枯に敗れしものを窪に止め

雨情詩碑鶏はとさかで払ふ

山唄やどさりと榾火腰くだけ

栗の本よむ栗園の雪真白

真白空白に詩を書かで置く

日のくれのけむり精出せ枯飯場

白きもの降りては百葉箱を葺く

氷りては山水止る女人堂

雪白の中に鴨見の目がつぶれ

火形にて焚火深雪にくだけゆく

雪谷とけぢめを強く水くだる

雪谷に心洗ふは矢張り水

鬼は外日光笹の隈光り

ダムを取巻く冬山の翁枯

ふぶく中ゴンドラは定められた道

雪嶺立つ北の鬼房望むため

開拓の唄か独語かのつる

雪厚し紙漉衆はせぐくまる

日輪はともるものなり紙漉場

氷雪を草は荷へり楮剥

青空はどこへも逃げぬ炭を焼く

炭窯は炭の匂に火を弱め

枯麓落石であり墓である

一つ始めし銅山の赤い焚火