和歌と俳句

平畑静塔

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寒菊に文字生きしまま灰の紙

千鳥去る和服の裾の色めきて

木枯しの尾を逃れたり主婦の道

クリスマス更けてしたたか溝にほふ

除夜の月物干竿も赫々と

命守り夜目にしらじら除夜了る

弔旗立つ家鴨は冬の毛栄えして

冬冴えのレールや鳩の拾い食ひ

伊賀の子寒し額集めて地にかがむ

枯野ゆく鳴りを鎮めし楽器箱

寒星をぶちまきし下浮浪がり

白がねの息立つ共に寝共に老い

イヴの燭黄色の皮膚つつしみて

或る枝の澄みて始めし落葉かな

子の下宿冬清浄の空を持つ

鼻唄やみんな厨に除夜の月

枯野ゆくうちに一本白髪伸び

膳提げし母のまぼろしふぶくかな

雪虹を解きてしづかにもたらさむ

大根を葉でぶらさげて湖渡る

鳰のうみ青波を鴨ついばめり

奈良七重老いて万灯詣でかな

夜焚火のあぶれ者には神も失せ

粗食村節穴ともす除夜の鐘