和歌と俳句

平畑静塔

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齢なき神の集ひて里神楽

雪ふりのこる大峯の地形にて

天上に峯をささげて雪冠す

飛雪にて雪ぎし頭男山

男体を崇む年木を軒に詰め

きはまりの除夜や明星むらさきに

円空に冬日まぶしむ遠出猿

枯敷きて坐る真顔の長の猿

身を掻きて猿も立ち去る枯峠

絶頂は吹雪の雪の仮初よ

雪催女峯は隠れ易きかほ

麓人吹雪にて眉描くほど

寒星は毛の両国に一つ星

屋根に雪開拓の家ころがれり

雪を掻くがりがりがりと地表なり

白樺の下も前栽雪を掻く

膝掛の椅子ゴヤ展に何を編む

ゴヤ展も素枯日本の或る日向

流川は野を辿るなり寒造

一粒も米酒杜氏踏みしあと

真水にてすすぐ杜氏の土不踏

したたらす顎髯欲しや新酒酌む

寒造金色の鯉沈めては