海苔舟に花の雲あり紀三井寺
海苔舟をつなげる松や玉津島
玉垣に照り添ふ浪や雛納め
夜桜の篝の照らす馬酔木かな
卒業子緇衣とかはりて花のみち
花が散る村のポストへ看護婦が
道中の桟敷貫ぬく遅ざくら
東風に帆を張りて復員船とは見えぬ
復員船東風吹く国旗ありやなし
噴煙の春むらさきに復員す
手にゲーテそして春山ひた登る
横顔の誇るや春の絶巓に
盾の如海苔干す故郷敵とする
卒業の美女より水の如き礼
腰形尼服春空にて乾く
耕すがよし聖餐に腹円く
処女のみのミサに雲雀の上下音
わが下僕顔春の夜のエス祈る
胸白き者と箸とる汐干潟
君の為海の貝掘る田鍬にて
芽柳を感じ深夜に米量る
卒業や綿着短き親はべり
囀りが処女の柩車を軽くせり
うづたかき処女の膝置く桜の園