戸障子の耐ゆる光の大雪解
中日の斎きも暇な春の午后
榛の木が麦踏に来い来いと呼ぶ
万葉の早蕨摘みて笊に干す
窯出や童女を蝶が連れ去らぬ
日の遅さ死の口上を飛脚して
囀や耳も遺影は引伸し
鍔広し茶摘帽子を茶にかぶせ
大向富士茶摘笠解かしむる
しらじらと墓はかたまる梅の花
彼岸会やすべて有髪の墓ならで
みんなみへ乗り込みにけり雪解川
鳥の巣を地にこぼせしか宮大工
鳥の巣の転落瓦解卵割る
鳥居立つ蕨も神の草なりき
腰だめに雨戸引込む西東忌
大空寝涅槃の顔の横たはる
八十八夜茶山に蝶の手毬かな
茶摘唄姉に交じへて口籠る
木の芽和つつく隅隅まで母郷
鍋墨の顔ひそめけり燕くる
梨の花ふふむ裏戸に出る涙
蓬摘むいぶせきものの出でて候
輿入の夜にもどりけり女夫雛
明るみに出過ぎたる墓西東忌