ひとり海苔掻く乗る舟の尾を上げて
全能の牛の目の玉耕せり
赤土を足袋に復活祭のしるし
ぴりぴりと近江の蝌蚪が動きだす
体内の菜の花あかり野良着きて
握り太徳利を卒業生に注ぐ
春蘭を掘り学帽に入れこめり
梨の花とんで母屋の塵となる
蝶となる梨の落花の立上り
鋤きいそぐこれで総出か山ざくら
春山家出るに白髪の櫛目立て
雄鶏をとばす薪棚朝ざくら
山川に洗足の石蕨狩
うぐひすにダム一椀の水だまり
なきものは天に帰りし残り雪
春の昼化石の中に羽ひろぐ
目を下げて文人の像雛節句
うぐひすや倒れる杉を森支ふ
葎にも山焼の火の一雫
落花の木いづれ耕野のみどりの木
卒業や流れる花の花言葉
空壕に蕨探しのあにいもと
井筒より蝶ひきかへす益子窯
誰も出て落花の敷を巻きもせぬ
その風に山坂も乗る花吹雪