和歌と俳句

平畑静塔

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渋柿を天にとどける神楽笛

里神楽出を待つ畑の菜を賞めて

傾きて日脚一服里神楽

神楽面脱ぐ水洟の涜なし

里神楽見そなはされし天に礼

落葉焚く倭以来の煙立て

綿虫の生けるを放つ道しるべ

七五三埴生の藪に拝まるる

摩崖仏見醒めしにけり寒椿

自然薯を抜き損はず山眠る

葛枯れて汽車は引摺る箱と箱

構はずてくもる歪田年のくれ

大根を掛けて出雲の阿國晴れ

口髭も八雲の顔の寒さ避

埋火に問ひぬ八雲の裔いかに

硝子戸の中の文藻石蕗の花

火胼胝して八雲ゆかりの火鉢守る

白鳥に黒白の雲黒動く

白鳥も少年少女らしく鳴く

純白を持して白鳥人を撰る

七五三紛るるものはほぼ常着

七五三乙女に軽く伴されて