和歌と俳句

冬の月

後拾遺集 大弐三位
山の端は 名のみなりけり 見る人の 心にぞいる 冬の夜の月

清輔
しろたへの 雪ふきおろす 風越の 峰より出づる 冬の夜の月

新古今集・冬 殷富門院大輔
我がかどの刈田のおもにふす鴫の床あらはなる冬の夜の月

鴨長明
いつはりを わきて咎むる しめの内ぞ 昼とな見えそ 冬の夜の月

定家
つたひ来し 筧の清水 つららゐて 袖にさえたる ふゆのよのつき

この木戸や鎖のさされて冬の月 其角

衿巻に首引入て冬の月 杉風

つめたさの身にさし通す冬の月 杉風

あら猫のかけ出す軒や冬の月 丈草

戸の外に是非なく置や冬の月 千代女

鳥影を葉に見てさびし冬の月 千代女

笛のねのいつからやみて冬の月 也有

静なるかしの木はらや冬の月 蕪村

石となる樟の梢や冬の月 蕪村

しづかなる柿の木はらや冬の月 召波

温石の百両握るふゆの月 召波

砂に埋須磨の小家や冬の月 暁台

浅からぬ鍛冶が寐覚や冬の月 白雄

犬にうつ石の扨なし冬の月 太祇

外堀の割るる音あり冬の月 一茶