風少し出しよと見れば冬の月 石鼎
竹の葉をさすがに照らし冬の月 石鼎
うすうすとけぶる梢や冬の月 水巴
冬の月枝にからみてゆがみたる 立子
窓をさす褞袍照らすや冬の月 石鼎
歳晩ちかき大松の空や冬の月 石鼎
提灯に袴の襞や冬の月 石鼎
空稲架に添ひゆく人や冬の月 石鼎
冬の月をみなの髪の匂ひかな 喜舟
茂吉
わが友と低きこゑにて話し行く鎌倉のうみの冬の夜の月
道わるき路地にいでけり冬の月 立子
茂吉
まどかにも照りくるものか歩みとどめて吾の見てゐる冬の夜の月
茂吉
中空に小さくなりて照り透し悲しきまでに冬の夜の月
寝ぬる子が青しといひし冬の月 汀女
冬の月明るきがまま門を閉ざす 多佳子
冬の月骨髄に悔のこりけり 楸邨
冬の月かかる明るさ忘れんや 楸邨
冬の月ベッドにすがり糞まれば 波郷
枕辺や冬の月さす鉄兜 楸邨
冬月を負ひ立てるものみなくらし 楸邨
松ばやしぬけねばならず冬の月 万太郎
砂みちのすこし上りや冬の月 万太郎
冬の月いでて歩廊の海冥き 多佳子
冬の月焦土に街の名がのこり 楸邨
冬の月より放たれし星一つ 立子