水鳥のしきりに立ちて羽ばたける
ペリカンの人のやうなる喧嘩かな
子供等に楽しき紅茶雪だるま
つくづくと雪山近く歩きけり
いつまでも同じ山道氷柱みち
凍て道や春ももうぢき椢山
しんしんと寒さがたのし歩みゆく
舟の前鴨とび立ちて渡りけり
吹き立ちし欅落葉や空まさお
昼前に落葉掃きしと百花園
日光にあす行くといふ火桶だく
時雨けるよき日なりけり宮詣
時雨るるや旅の気儘の時なしに
山茶花や如意輪堂はまだ遥か
美しき銀杏落葉も道すがら
冬晴や蔵のやうなる家ばかり
船長は毛糸編みをり舟静か
この道もやがて凍てんと歩きゆく
道わるき路地にいでけり冬の月
前の人少し霞みて冬の雨
歯のいたむ話してをり大根干す
冬凪や子沢山なる漁師町
煤掃や箪笥のこはれ釘をうつ
煤はきやバケツに熱き湯を入るる
来し妓のみな俳人や年忘