和歌と俳句

山茶花 さざんか

左千夫
七人の児等が遊びに出でて居ずおくに我れ一人瓶の山茶花

牧水
白樫の山茶花のやや茂りたるちひさき庭の病院のまど


雀鳴くあしたの霜の白きうへにしづかに落つる山茶花の花

山茶花や二枚ひろげて芋筵 鬼城

雨戸樋の針金とけて山茶花へ 石鼎

山茶花や空少しある軒の下 石鼎

夕焼のうすれ山茶花も散りゆくか 水巴

山茶花のみだれやうすき天の川 水巴

利玄
寺庭に夕静あゆみさむけきに目にとめて見つ白き山茶花

利玄
しづかにてくらくなりきつ顔つめたく寺庭歩くに山茶花の白き

利玄
築山裏淡紅いろ山茶花咲きてをり静けさまとまるこのひとくまに

山茶花や蕋開きたる小半日 石鼎

山茶花にあかつき闇のありにけり 万太郎

生け垣に山茶花まじる片かげり 龍之介

山茶花に日を疑はず歩きけり 石鼎

山茶花や落葉林に見え隠れ 石鼎

さし出でゝ山茶花赤し一梢 石鼎

花まれに白山茶花の月夜かな 石鼎

山茶花や落花かゝりて花盛り 花蓑

山茶花のまはりにこぼれ盛かな 花蓑

山茶花の紅斑華やぎ盛かな 花蓑

山茶花の蕋ふくよかに日あたゝか 石鼎

利玄
繊月の乏しき光鉢前の山茶花の花に或ひは宿れる

利玄
満開の淡紅色山茶花かつこぼれ芝生匂へる花びらの藪