和歌と俳句

山茶花 さざんか

虚子
山茶花の花のこぼれに掃きとどむ

八一
さざんくわのいくひこぼれてくれなゐにちりつむつちにあめふりやまず

秋櫻子
山茶花の暮れゆきすでに月夜なる

草城
山茶花やいくさに敗れたる国の

万太郎
山茶花の散りしく木の間くらきかな

草城
山茶花の咲くより散りてあたらしき

草城
山茶花の匂ふがごとく散り敷ける

秋櫻子
山茶花や潮に乗り来る海の鯊

秋櫻子
山茶花や生れて十日の仔牛立つ

万太郎
山茶花のよるべみつけし日ざしかな

爽雨
鎌倉の山茶花日和大人の門も

虚子
山茶花の真白に紅を過まちし

風生
山茶花にひとりを好む家居しぬ

秋櫻子
山茶花や金箔しづむ輪島塗

草田男
女家族は紙屑多し山茶花散る

波郷
山茶花の金の蘂病癒えしかな

秋櫻子
跪坐石の跡に山茶花散り敷ける

秋櫻子
山茶花や戦記の末に散りにほふ

秋櫻子
佳き石のあればさざんか散りおほふ

汀女
山茶花の大輪旦暮おだやかに

立子
山茶花や思ひ出あれへこれへのび

立子
山茶花に今日虻も出ず人も来ず

悌二郎
山茶花や罅こまやかに相馬焼