春を待つこころにもつれ枯枝影
落木に凍雲一つ拘泥す
寒椿咲きたることの終りけり
憂きことの紋服を着て小春空
炭せせる貧乏性をきらはるる
しがらみにかかるもろもろ年暮るる
運命に従ふごとく枯野ゆく
寸分の隙間うかがふ隙間風
冬の草心の隈にみどりなす
天日にさらして枯るる蓮かな
山茶花にひとりを好む家居しぬ
枯山へ生きて這ひ入る径かな
人住みて短日灯す門の袖
十二時の後は一時や霜夜更く
夜半寒くわがため覚めて妻愛し
わが生きる心音トトと夜半の冬
凍る夜の一時うつ音余韻なし
マフラアの業平格子老の伊達
枯るる中藪騒起すものひそむ
凍る夜の秒音何と急き刻む
冬の濤あらがふものを怒り搏つ
炭かつぐ父をかなしむ少女の句
狐火を信じ男を信ぜざる
狐火や濡るるがごときしんの闇
極月の折蘆の水の静かかな