和歌と俳句

富安風生

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風邪の妻きげんつくりてあはれなり

白菜に人参を横たへて赤し

枯山にはりつけてある麦畑

あたたかき十二月なりひまにも馴れ

大寒と敵のごとく対ひたり

銀杏落葉街よごれ人の顔風邪よごれ

枯るる山畦より狭き田を畳めり

静かなる起居の塵や冬座敷

大寒のただ中にある身の廻り

大寒の雲厳かに夕焼けたる

悴みて心ゆたかに人を容れ

凍土をなほ縛むる木の根かな

着ぶくれて固く己を守りけり

着ぶくれて老の眉目のなほ秀づ

枯蔓の引かれじとする力かな

茶の木咲き門坂琴をおくごとし

冬濤はその影の上くつがへる

冬至の日しみじみ親し膝に来る

勿体なき炬燵してあり翁の忌

観音経あがり桃青霊位かな

御燈明穂長に芭蕉霊位かな

勿体なき小春日和や翁の忌

芭蕉忌や羽紅の役の一作者

家並欠け葱畑の上に鳰の湖

時雨るると袖うちかざしよろこべる