蓮根掘夕焼面をあげにけり
萱刈のをるところまで登りけり
足迹の千鳥の中の烏かな
山門を通りぬけけり大根馬
腹当の吉といふ字や大根馬
茶の垣の上にもおいて干大根
散紅葉岩ばかりなるいづこより
枯蓮にわれ等佇てば里の子も
凍鶴と寒雀とはかかはらず
凩や媼もすなる頬被り
冬霞茶の木畑に出て見れば
揚げ舟に腰うちかけて冬ぬくし
ははそばにかしづきて冬あたたかき
大蘇鉄冬あたたかに蟠り
亡き父の手紙仕立ての屏風かな
闇汁やおてんぼといふ大杓子
炭出しに出てもつき来る猫可愛
散紅葉ふかきところにふみ入りぬ
この道の欅の落葉はじまりぬ
茶の花のころがつてをる甃
山茶花のちり浮びたる竜の髯
万両や苔をもとへる手水鉢
万両や軒にかぶさる鞍馬山
へつつひに冬至の柚子がのつてをる
まだ見ゆる門かへりみる枯堤