狐火の失せし道より小提灯
彳むやちりちりと鳴る萩枯葉
何もかも知つてをるなり竈猫
竃猫人の話を聞いてをる
太幹の壁のやうなる日向ぼこ
老校書一さし舞ひぬ年忘れ
いしぶみのもと一塊の芝枯るる
顔見世のまねき見て立つ手をつなぎ
枯蓮マッチの軸をすてて赤し
茶の木咲き山水珠を転ばせり
芙蓉枯れ枯るるもの枯れつくしたり
枯萩の縷よりも繊きもつれかな
冬日あび庭にまらうど外を飴屋
冬座敷向ふ二階に炭屋の子
冬燈人のこころを見まもりぬ
人波にもまれ腹立ち日短か
マントのボタン大きく鎌倉の子遊べり
雪嶺のそばだつ畦の子供かな
汽車見る子せちにいとほし雪の原
客を見て炉辺のやや子もよいきげん
炭とりに出て風花の夜も舞へり
昔男ありけりわれ等都鳥
冬の園楽しき子等に父母あり
石蕗黄なり文学の血を画才に承け