和歌と俳句

冬の日

立子
大仏の冬日は山に移りけり

立子
休む間に早かげり来し冬日かな

草城
歩を返しそびらに受くる冬日かな

草城
冬日射いのちの端にさはりをり

かな女
父と母の御墓一つ冬の日に

芝原の石の影ある冬日かな 喜舟

常盤木の葉のてらてらと冬日かな 蛇笏

冬の日や仏の花の松ぼくり 喜舟

冬の日や雀煤けて駅の屋根 喜舟

立子
冬の日のなほ移りゆく園にあり

鵜は舟に鴉は山に冬日かな 蛇笏

冬の日や龍の落とし子長汀 喜舟

冬日あびるに桜の闇のひろすぎる 彷徨子

普羅冬日ざし生瀬の駅は藪のかげ

乳を滴りて母牛あゆむ冬日かな 蛇笏

座にすこし窓にすこしの冬日かな 石鼎

草城
冬日射わが朝刊にあまねしや

草田男
機影去り直視為し得る冬日あり

草田男
さざら波募れば冬日載りにけり

草田男
冬日さす外出用意の二階かな

草田男
永く居て薄き冬日にあたたまる

草田男
昃りたるところへ冬日射してくる

草田男
午前の冬日午後の冬日や飢深し

たかし
境内の冬日を追て遊ぶ子等

淡路女
悲しめば我れに冬日のいと親し

楸邨
物蔭の冬日は誰も忘れゐぬ

風生
冬日あび庭にまらうど外を飴屋

千代田城げに太極の冬日かな 蛇笏

舞ふちりと縁に五彩や冬日ざし 石鼎

鳥にげて枝うごきたる冬日かな 石鼎

田のへりに藁ばかま涸れ冬日かな 石鼎

三鬼
空港の青き冬日に人あゆむ

三鬼
冬日地に燻り犬共疾走す

林火
冬の日や細菌の図を染めて落つ

虚子
旗のごとなびく冬日をふと見たり

かな女
よび出して聞きたる声に冬日さし

草田男
冬の日や電車を出れば顔ゆるむ

楸邨
黄檗の冬日しんかんたる石廊

楸邨
身にしんと玉階をのぼる冬日あり

楸邨
換気筒のみがまはれり冬日の中

楸邨
行軍兵冬日に背きゆくばかり

楸邨
血曼荼羅冬日に燃ゆる仏あり

鷹女
子と母に冬日こぼるる燦燦と

鷹女
とぼしらの冬日に人を斬る絵を描き

鷹女
冬日凍つ紅きゑのぐは血の匂ひ

鷹女
冬日野を染めつつ松を聳えしむ

虚子
冬日濃しなべて生とし生けるもの

秋櫻子
鯉淡くうすら冬日の影も消ゆ

鷹女
冬日の中父に似し子をさびしみゐる

鷹女
飴ねぶり大き冬日を背に負ふも