和歌と俳句

日野草城

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ともし灯の輝りはえてゐる寒さかな

暮れてゐる冬至の顔の往き来かな

食堂や師走の花のいきいきと

年の瀬や選句疲れの茶のけむり

短日や盗化粧のタイピスト

短日や壁に居残勤務表

大寒やしづかにけむる茶碗蒸

歩を返しそびらに受くる冬日かな

冬日射いのちの端にさはりをり

冬晴やさびしくなりし嵐山

冬晴やふたゝびはいる西大寺

かんばしき黒珈琲や初しぐれ

ひとつれの時雨やどりや清閑寺

二上は天の眉かもしぐれけり

東山はかなくなりてしぐれけり

時雨傘ふたたびひらく水の上

時雨傘比枝が霽るゝと傾げあふ

寒の雨はじくからかさ通りけり

ゆくほどにのきびしき山路かな

二杯目の甘酒あつき霜夜かな

晴雪やたばこのけむり濃むらさき

てのひらに熱き火桶や雪景色

晴雪やとろとろ熱きチヨコレート

風花に大き巌のそびえたる