食ふまでのたのしさ尽きず寒の柿
親猫はずつしり重し冬ごもり
小走りに妻の出て行く冬至かな
わがゆまる音のしづかに年暮るる
きこえをり北のはたての除夜の鐘
炭継いで上げし明眸にて視らる
食べさせてもらふ口あけ日脚伸ぶ
冬ごもり寝間着の柄が気に入りて
季節風いのちを庇ふ家軋む
妻はまだ何かしてをり除夜の鐘
朽ちし胸空寂として冬ごもり
重ね着や栄枯盛衰みな遠く
伝へ聞く友の栄華や日向ぼこ
くれなゐのまつたき花の寒椿
初霜や朝餉のあとの茶のかをり
冬日和誓子が近くなりにけり
女手に注連飾打つ音きこゆ
いつも見る景色が雪をかうむりて
冬薔薇や強風注意報解除
冬ごもり七曜めぐること早し
冬晴れや鵙がひとこゑだけ鳴いて
耳鳴りにまぎれず啼けり冬ひばり
ことりともいはぬ霜夜のしづけさよ
冬晴れや朝かと思ふ昼寝ざめ
きらきらと暁の明星年詰る