和歌と俳句

冬籠り ふゆごもり

探しものして片づけて冬籠 虚子

たまきはるいのちをうたにふゆごもり 蛇笏

ユネスコのこころを持ちて冬籠 石鼎

この冬を籠りて稿を起こさんと 虚子

古き家によき絵かゝりて冬籠 虚子

忘れゐし事にうろたへ冬籠 虚子

無駄な日と思ふ日もあり冬籠 虚子

大空と大海の辺に冬籠る 石鼎

親猫はずつしり重し冬ごもり 草城

冬ごもり寝間着の柄が気に入りて 草城

朽ちし胸空寂として冬ごもり 草城

冬ごもり七曜めぐること早し 草城

湯殿には椎茸づくり冬ごもり 爽雨

心徹り気の昂りたる冬ごもり 蛇笏

見度きもの行き度き処冬籠 立子

目はきげん口は不機嫌冬ごもり 万太郎

客といへば医者のくるだけ冬ごもり 万太郎

気やすめの薬ばかりよ冬ごもり 万太郎

冬ごもり閉ぢてはあける目なりけり 万太郎

冬ごもり餅くひちぎりかねしかな 万太郎

鉄瓶に傾ぐくせあり冬ごもり 万太郎

また一人死んだしらせや冬ごもり 万太郎

日に痴れて心悔いなし冬ごもり 万太郎

紙屑のたまるばかりや冬籠 万太郎

母に客我にも客や冬籠 立子

背に触れて妻が通りぬ冬籠 波郷

死んでゆくものうらやまし冬ごもり 万太郎

人々の心にあまえ冬籠 立子

何故か昨日なつかし冬籠 立子

冬籠る挨拶のごとひとに告げ 林火

帰り着くごとくに冬を籠るかな 林火

冬籠無事を楽しむことを日々 林火

わが声も忘るるほどに冬籠 みどり女

めつむれば山河きらめく冬籠 林火